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患者さんを身近でささえるみなさまへ

遅発性ちはつせいジスキネジアは、できる限り早く見つけて、悪くなる前に改善方法を考えることがとても大切です。
遅発性ジスキネジアによる体の動きの問題については、ご家族の方や介護の方など、患者さんの生活を身近でささえる方々が、患者さんよりも早く気づくことがよくあります。その理由は、患者さんご本人が体の動きの変化に気づいていない場合や、気づいていても、あまり気にされていない場合があるからです。

その一方で、遅発性ジスキネジアによる体の動きのせいで、「食べる」「飲む」「歩く」などの日常的な動作に不便を感じたり、「口や舌が勝手に動いてしまう。でも、どうすればよいかわからない」「周りにどう思われているのだろう?」と悩んでいる患者さんも少なくはありません。
遅発性ジスキネジアに早く気づくことは、患者さんのより健やかな毎日を応援することにもつながります。

なぜ早く気づくことが⼤切なのですか?

遅発性ジスキネジアによる体の動きの問題は、ある⽇突然あらわれるものではなく、最初は誰も気づかないような⼩さい動きで始まります。しかし、その体の動きの問題は、⽇が経つにつれて少しずつ⼤きくなり、⾒てわかるほどまでひどくなることもあります。
遅発性ジスキネジアによる体の動きがあらわれた患者さんには、周囲から変に思われていないか気になり、⼀⼈でストレスを抱えている⽅や、引きこもりがちになっている⽅もいらっしゃいます。遅発性ジスキネジアに早めに気づき、対応することは、こうした患者さんの⽇々のストレスを和らげることにもつながるでしょう。

遅発性ジスキネジアがさらにひどくなると、命にかかわることもあります。例えば、「呼吸性ジスキネジア」とよばれるタイプでは、息がしづらくなり、呼吸困難になることもあります。「⾷道ジスキネジア」とよばれるタイプでは、のどに⾷べ物が詰まりやすくなり、窒息してしまうこともあります。
これらのような状況を起こさないためにも、できるだけ早く異変に気づいて、担当の先⽣に相談し、改善につなげることがとても⼤切です。

早く気づくための3つのポイントは、「知る」「観察する」「相談する」

01「知る」

~遅発性ジスキネジアによる体の動きを知り、覚えましょう~

まず、遅発性ジスキネジアで起こる体の動き方を知り、覚えましょう。
遅発性ジスキネジアでよく見られるさまざまな体の動き方を、「症状動画ライブラリー」にまとめました。

症状動画ライブラリー

また、それぞれの動き方の特徴は、遅発性ジスキネジアについて解説しているページにもまとめています。

遅発性ジスキネジア解説ページ
「どのような症状がみられますか?」

02「観察する」

~いままでと違う体の動きがないか、じっくり注意して、定期的に観察してみましょう~

次に、遅発性ジスキネジアの動きを勉強したら、患者さんに同じような体の動きがないかを観察してみましょう。
例えば、口や舌、手足に遅発性ジスキネジアのような動きはありませんか?
下の表1に示したようなことがありませんか?

表1 遅発性ジスキネジアの「口の周りによくみられる動き」を見つけるポイント1)

  • 以前に比べて、しゃべりにくそうにしていませんか?
  • 食事中にむせたり、せき込んだり、のどに食べ物が詰まりそうになることはありませんか?
  • 何かをかんでいるかのように、口をモグモグと動かすことはありませんか?
  • 口を少しパクパクさせて「チャッ、チャッ」とか、「チュッ、チュッ」といった音をたてることはありませんか?
  • 会話中に、舌を突き出したり、くちびるをなめるような動きをすることはありませんか?

堀口 淳先生ご提供

また、遅発性ジスキネジアは下の表2に示した方にあらわれやすく、体の動き方に問題がないか、週1回ほど定期的に、注意して観察するようにしましょう。患者さんをみることが多い方(患者さんのご家族、病院・介護施設の看護師や介護士など)は、患者さんに起こった異変に気づく機会が比較的多いはずです。その一方で、患者さんの動きに見なれているために、遅発性ジスキネジアの早いうちの「体の動きの小さな変化」を見逃してしまいがちになるという面もあります。

表2 遅発性ジスキネジアが起こりやすい方 2-4)

  1. 最近新しくお薬 注)を飲み始めた方(特に、飲み始めて2~3ヵ月以上経っている方)
  2. 何年~何十年と、長い間お薬 注)を飲み続けている方
  3. ①・②のようなお薬 注)の使用に加えて、高齢の方、女性の方、精神疾患(統合失調症など)を長い間わずらっている方、脳に障害がある方、糖尿病の方、タバコを吸っている方、アルコール依存がある方
    (これらの方では、そうでない方に比べて遅発性ジスキネジアが起こりやすいといわれていますので特に注意しましょう)

注)ここでは遅発性ジスキネジアが起こる可能性のあるお薬をさします(抗精神病薬、抗てんかん薬、抗うつ病薬など)

03「相談する」

~「動き方がどこかおかしい」と思ったら、そのままにせず、担当の先生などに早めに相談を~

上の症状動画ライブラリーでも紹介しましたように、遅発性ジスキネジアの動きには、健康な方にもみられるような動きもあるため注意が必要です。
例えば、口をモグモグする動きも出たりしますが、年配の方や入れ歯を使っている方でも同じような動きが出ることがあります。そのため、「年齢のせいでは?」「入れ歯のせいだからたいしたことはない」などと思われがちです。
しかし、そのままにしておくと、遅発性ジスキネジアによる体の動きがもっと悪くなり、患者さんの日常生活に影響が出てしまうおそれもあります。たとえ小さな変化でも、「何かおかしいな」「どこか前と違うな」「前はこんな動きはしていなかったのに、、、」と心に引っかかるときは、担当の先生などに早めに相談し、状況をしっかり見きわめてもらいましょう。なお、相談するときの主な診療科は精神科や心療内科ですが、その他の診療科(例:神経科、神経内科・脳神経内科、内科、一般科など)でも、こころの病気の患者さんを治療することが多い先生がいる場合は相談してみるとよいでしょう。

【参考資料】

  1. 堀口淳. 精神医学. 2021; 63(2): 247-259.
    利益相反:著者は、田辺三菱製薬株式会社より顧問料及び講演料を受けている。
  2. 日本精神神経学会日本語版用語監修, 高橋三郎, 大野裕監訳. 染矢俊幸, 他訳. DSM-5® 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院2014. p706
  3. 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)平成21年5月(令和4年2月改訂)
  4. Solmi M, et al. J Neurol Sci. 2018; 389: 21-27.
    利益相反:著者には、ヤンセンファーマ株式会社の顧問又はアドバイザーを務める者、同社に専門家証言を提供した者、及び同社より謝礼又は助成金を受けた者が含まれる。